わが国の電気事業は、民間主導で始まり、戦時中の国家管理を経て、昭和26年(1951)の電気事業再編成によって再び民営の9電力体制(現在は沖縄電力を加えて10電力体制)に再編・統合された。しかし、黒部川電力は、この二度の統合を免れて存続した。それは、その時々の歴史の必然としか言いようがないが、そこには、水力発電に、あるいは、地域開発にその人生を賭けた男たちの挑戦があった。電気事業の黎明期、地方の津々浦々にまで電灯を普及する一方、重電機、弱電家庭電器製品の国産化に力を注いだ川北榮夫、また、地域の水力資源を守り、大都市資本に真っ向から対峙して北陸を守り抜いた山田昌作、そして彼ら2人とともに夢を描き、ともに困難に挑んだ男たち・・・・・・。 黒部川電力は、この2人によって、親会社の破綻、M&A(Mergers and Acquisitions)、巨額電力料金の滞納、国家管理による消滅、さらには財閥解体による会社3分割など、幾度もの危機に直面しながら生き抜いてきた。 黒部川電力の九十余年を支え、水力発電に夢を賭けた男たちを追う。